瑞慶覧かおり  Art work
私の描くフレスコ技法について
この前のフレスコ展以来、技法についてお問い合わせ頂くことが増えてきました。
これまであまり公表してきませんでしたが、お世話になっている材料メーカーの特許のことやその他もろもろが大分落ち着いてきて、きちんとお話できるようになったので書きます。

在学中に私がずっと研究してきたのは、カゼインによるフレスコセッコの技法です。↓

http://kawori.main.jp/fresco-laboratory.html

フレスコ画の美しい発色はそのままにして、限られた描画時間という技法的制約と、分厚く重すぎる下地という物質的問題を解決するために、私はこの方法でフレスコ画を描いてきました。

しかし卒業後、材料や化学的な側面からもっと表現の幅を広げていけるような方法を、都内にある某化学メーカー研究者の方からご提案いただき、2012年春から新しいフレスコ画法での制作がスタートしました。

今やっているフレスコ画は、そのメーカーさんが建築用途として開発された、結着性の非常に強い消石灰を使用しています。
この消石灰は、ご紹介頂いた当初信じられませんでしたが、糊剤など一切混入してない完全無機のものでした。(これがフレスコではかなり重要な点です。)
イタリアの石灰貯蓄層で長年寝かせたような、強固な結着性をもった良質な消石灰、それ以上のものを、日本の化学技術の力で工業的に生産することを実現して下さったのです。

また下地についてですが、どんなに熟練した左官技術を要しても、漆喰下地を厚さ3ミリ以下に抑えることは困難でした。この工程も、ベース紙に消石灰と骨材を機械で圧縮塗布する方法で、厚さ0.4ミリのシートにすることに成功しました。
このシートは当初、化学反応率60%の状態です。
この段階でブオンフレスコの工程を行い、反応後に木製パネルに施工することで、第一段階の制作としています。
乾燥後は、上記の消石灰を顔料と混ぜた絵具などで描画することで、時間的な制約は受けません。
これによりフレスコ画とは思えない細部の描写や重ね塗りが、可能となりました。


色々書いてしまい、かえって分かりづらくなってしまいましたが、簡単に言うと工業的に施工した極薄の漆喰に、消石灰で作った絵具で描いていく、フレスコセッコの分類です。
逆にフレスコに精通してらっしゃる方は、上記説明では不十分なことも多く、消石灰の明白色化のことや結着性の点で、そんなに上手くいくはずはないと感じられるかと思います。
それらのことについても化学的な根拠や実験データがあるので説明は可能ですが、私が作った開発品でないので会社の機密保持契約的な事情があり、ブログに書けるのはこんなところです。

数年後にこの素材が公使公用となった時、いま書きかけの新たな論文があるので、発表したいと思っています。この技法についての簡単な文章は、フレスコ普及協会の会報NO.10で書かせて頂きました。そちらをご覧ください。

なんだか偉そうなことを沢山書いてしまいましたが、今の私の絵は、2年間共にフレスコの研究に携わらせて頂いてきた、メーカーさんの技術力に大きく支えられているということです。
個人規模の勉強や研究では到底実現できなかったことなので、このご縁には本当に感謝しています。
こんな若手作家の意見を真摯に聞いて下さり、どうフレスコに応用できるか様々な検討をして頂き、それを常に実現してきて下さいました。
私も次から次に紹介して頂ける材料を色々試し、制作以上にフレスコの研究が楽しいと思えた2年でした。
材料が変わり、技法が変わり、表現の可能性が広がることで、絵も少しずつ変わっていきました。


次回の展示では最近新しく開発されたばかりの、これまでより質感を強めに出した漆喰シートを試しに使用させて頂いてます。
もっと漆喰の質感を!という私の我儘を見事に実現して下さった、新しい下地になっています。
多少、漆喰に雲母(キラ)をしのばせてあるので、自然光に照らすときらりきらりと絵肌が宝石のようです。
ぜひ本物をご高覧いただければ幸いです。

 
http://kawori.main.jp

 
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Comment








従来の質感の有る漆喰シートでの作品を早く観たいものです。
絵画的表現にはその方がなじみがあり、佳いのでは無いかと期待しています。
素材そのものの違いは、その利用範囲や条件により適不適が有るので、選択幅が殖えるのはとても素晴らしい事ですね(*^^)v
from. うっしー | 2014/01/23 09:10 |
一番大きな作品には、これまでのものより漆喰感を出したので、古典的なフレスコらしい質感になってるかと思います。

お時間あいましたら、ぜひお立ち寄りいただければ嬉しいです。近くでご覧いただかないと、分からない変化なので(;^ω^)
from. 瑞慶覧かおり | 2014/01/25 18:17 |
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